モロッコに向かっています。
朝の6時前に、イスタンブール空港に着きました。
ターミナルはベンチ難民がうろうろするほど混んでいて、マスク率は0.5%くらい。完全に日常を取り戻しました。マスクをしているボクらの方が迷惑な存在です。
お腹が空いてたまらないのでカフェでクロワッサンを食べようとしたら、一個400円もするじゃないですか。
じゃ、コーヒーで我慢しようと値段を見たら500円!
貧乏四面楚歌。
食うものも食わず飲むことも叶わず、6時間もなすすべなくぼんやりするマインドフルネスは、いい歳こいてるぶん、辛いです。
バブル世代だというのに。
空腹ですっかり頭のなかが矢吹ジョーになったころ、モロッコへ飛びました。
機内は、目を離すとすぐにマスクを外す大人気ない連中と、それを叱るキャビンアテンダントとの不毛な闘い。
もう、マスクなんてどうでもいいから、なるはやでお昼にしてくれませんかね?
マラケシュ空港到着。
第一鬼門はイミグレ。
去年、17ヶ月間に渡るオーバーステイをしたものだから、そこんところを突かれると悪いことをした気はさらさらないんだけど、アラビア語やフランス語で言い訳できないもんで気が抜けないのです。
英語を話せないイミグレ担当官との筆談(!)はオーバーステイは指摘されず、ひと安心。
バゲージクレームで荷物を受け取ります。
5本ものタイヤをカートに積み上げて、目立たないように息を殺してさりげなく外に出ようとしたところで、
「あー、これこれ」
呼び止められたのです。
制服を着たおじいさんに。
あと一歩だったのに。
「この荷物は何ですか?」
「タイヤです」
じゃ、これは?
「タイヤです」
こっちにきなさい。
出口まであと2メートルだったというのに別室に連れてかれ、さらなるオヤジの尋問を受けます。
「タイヤって、ひとついくらすんの?」
一本、26ユーロです。
えーとあのですね、これ、売るんじゃなくて、自分で使うタイヤです。車で旅をしているのです。日本からモロッコまで運転してきちゃんですよ、すごいでしょう?って地図を見せたんですが、興味ないみたい。しきりにパソコンを覗いて、誰かに電話して、眉間に皺を寄せながら紙に書いた数字は400。
なんなの、400って?
ってところで、若い担当官が現れて、おじいさんから説明を聞いて、ふむふむなるほど。腕を組みます。
あのですね、このタイヤは売るんじゃなくて、自分で使うんです(以下省略)って、すがるように説明したら、あっさりと、了解!て頷いて、行っていいよって解放されました。
よくわからないけど、ありがとう。
それにしても、なんだったんですかね、あの400。
タクシー代が6,400円(500ディラハム)から9,000円(700ディラハム)に値上げしていたけれど、トラブルもなくエッサウィラの家に到着しました。
だのに、家に誰もいないじゃない。
入れないじゃない。
どうなってんの?ってメールして、ずいぶん待たされたあとに知らない青年が鍵を持ってきたけど、鍵が穴に刺さらない。
目の前にドアがあるけど、開かないのです。
そういうところ、アフリカあるあるあるあるあるあるです。
あるんです。
万事うまく行ったように見えて、鳥羽口の絶望。